InstagramやTikTokなどのSNSを眺めていると、「#スペ115達成!」「目標はスペ115」といった投稿を目にすることがあります。「スペ〇〇」という言葉は、特定の体重を示す俗称として、特に若い世代の間で広まっていますが、今回はその中でも「スペ115」に注目します。
「スペ115」と聞くと、なんとなく「かなり細そう」「モデル体型?」といったイメージを持つかもしれません。しかし同時に、「それって健康的に大丈夫なの?」「もしかして痩せすぎじゃない?」と疑問や不安を感じる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、まず「スペ115」が具体的にどのような体重を指すのか、その正しい計算方法を詳しく解説します。
「スペ115」とは? まずは正しい計算方法を確認しよう
「スペ115」は、特定の団体や機関が定めた公式な指標ではなく、インターネットやSNSを通じて自然発生的に広まった俗称の一つです。その計算方法は非常にシンプルで、以下の式で表されます。
スペ115体重 (kg) = 身長 (cm) – 115
この計算式を理解するために、いくつか具体例を見てみましょう。
- 身長150cm の場合: 150 (cm) – 115 = 35 (kg) つまり、身長150cmの人にとっての「スペ115」体重は35kgとなります。
- 身長160cm の場合: 160 (cm) – 115 = 45 (kg) 身長160cmの人であれば、「スペ115」は45kgです。
- 身長165cm の場合: 165 (cm) – 115 = 50 (kg) 身長165cmの人なら、「スペ115」は50kgを指します。
このように、「スペ115」は、身長から115という比較的大きな数値を引くため、算出される体重はかなり軽くなる傾向があります。
他の「スペ」指標と比較すると、その位置づけがより明確になります。
- スペ100(身長 – 100): BMI上は普通体重の範囲内(標準体重に近いかやや高め)
- スペ110(身長 – 110): 美容体重(BMI 20)に近いと言われることもあるライン
- スペ115(身長 – 115): 今回のテーマ。美容体重よりもさらに軽い。
- スペ120(身長 – 120): 極端な低体重を示すことが多い。
「スペ115」は、「スペ120」ほど極端ではないものの、一般的に健康的とされる「スペ100」や、スリムさの目安とされる「スペ110」よりも明らかに軽い体重を示すことがわかります。そのため、「スペ115」は、しばしばモデルのような細い体型や、より痩せた状態を目指す際の目標値として言及されることがあります。
しかし、ここで絶対に忘れてはならないのは、「スペ115」を含むこれらの「スペ」指標は、医学的・栄養学的な根拠に乏しい俗称であるという点です。身長から一律の数値を引くだけの計算式は、個人の骨格の太さ、筋肉量、体脂肪率といった、健康状態や見た目に大きく影響する要素を全く考慮していません。したがって、「スペ115」という数値が、すべての人にとって健康的、あるいは理想的な体重であるとは到底言えないのです。
「スペ115」は痩せすぎ? BMIで客観的に評価する
では、「スペ115」は客観的な指標で見ると、どの程度の体重なのでしょうか? ここで、健康状態を評価するために国際的に広く用いられている**BMI(Body Mass Index)**を使って、「スペ115」を評価してみましょう。
BMIの計算式と判定基準を再確認します。
BMI = 体重 (kg) ÷ (身長 (m) × 身長 (m))
【BMI判定基準(日本肥満学会)】
- 18.5未満: 低体重(やせ)
- 18.5以上 25未満: 普通体重
- 25以上 30未満: 肥満(1度)
- 30以上: 肥満(2度以上)
この基準に基づき、「スペ115」の体重がどのBMI範囲に該当するのか、様々な身長で計算してみます。
- 身長150cm (1.5m) の場合: スペ115体重 = 35kg BMI = 35 ÷ (1.5 × 1.5) = 35 ÷ 2.25 = 15.6 → 低体重(やせ)
- 身長155cm (1.55m) の場合: スペ115体重 = 40kg BMI = 40 ÷ (1.55 × 1.55) = 40 ÷ 2.4025 ≒ 16.7 → 低体重(やせ)
- 身長160cm (1.6m) の場合: スペ115体重 = 45kg BMI = 45 ÷ (1.6 × 1.6) = 45 ÷ 2.56 ≒ 17.6 → 低体重(やせ)
- 身長165cm (1.65m) の場合: スペ115体重 = 50kg BMI = 50 ÷ (1.65 × 1.65) = 50 ÷ 2.7225 ≒ 18.4 → 低体重(やせ) の境界線(18.5未満)
- 身長170cm (1.7m) の場合: スペ115体重 = 55kg BMI = 55 ÷ (1.7 × 1.7) = 55 ÷ 2.89 ≒ 19.0 → 普通体重 (ただし下限値に近い)
この計算結果は非常に重要です。「スペ115」が示す体重は、ほとんどの身長においてBMIが18.5を下回り、「低体重(やせ)」の範囲に分類されることがわかります。
特に、身長が150cm台の場合、BMIは15台や16台となり、これはWHO(世界保健機関)の基準では「中等度の痩せ」や「高度の痩せ」に分類される可能性もある、かなり低い数値です。身長165cmでようやくBMI 18.4と低体重の境界線に近づき、170cmになって初めて普通体重の範囲(ただし下限ギリギリ)に入ります。
つまり、タイトルにある「スペ115は痩せすぎ?」という問いに対して、BMIという客観的な指標で評価する限り、多くの場合「はい、痩せすぎ(低体重)です」と答えることができるのです。これは、単に「細い」というレベルを超えて、健康上のリスクが懸念される状態である可能性が高いことを示唆しています。
スぺ115の見た目については、痩せすぎであるという説が一般的だと思います。
「スペ115」と美容体重、シンデレラ体重を比較 ~その細さの位置づけ~
「スペ115」がBMI上「低体重」に分類されることが多いことは分かりました。では、他の「理想の体重」とされる指標と比較すると、どの程度の細さなのでしょうか? ここでは、「美容体重」と「シンデレラ体重」と比較してみましょう。
- 美容体重: BMI 20。健康的で、かつ見た目もスリムに見えるとされる体重。
- シンデレラ体重: BMI 18。モデルのような細さをイメージさせるが、BMI上は低体重の境界線。
- スペ115: BMI 約16~19。多くの場合、シンデレラ体重よりもさらにBMIが低い。
再び身長160cmの女性を例に、具体的な体重を比較します。
指標 | BMI | 計算式 (身長1.6m) | 体重 (kg) | BMIによる判定 | 特徴・イメージ |
---|---|---|---|---|---|
シンデレラ体重 | 18 | 1.6 x 1.6 x 18 | 46.1 kg | 低体重 | かなり細い、モデル体型、健康リスク懸念あり |
スペ115 | 17.6 | 160 – 115 | 45.0 kg | 低体重 | シンデレラ体重より軽い、明らかに痩せている |
美容体重 | 20 | 1.6 x 1.6 x 20 | 51.2 kg | 普通体重 | スリムで健康的、スタイルが良いとされるバランス |
標準体重 | 22 | 1.6 x 1.6 x 22 | 56.3 kg | 普通体重 | 最も健康的、病気リスクが低い、標準的な体型 |
Google スプレッドシートにエクスポート
この比較表から、「スペ115」の体重(45.0kg)は、シンデレラ体重(46.1kg)よりもさらに軽く、美容体重(51.2kg)とは6kg以上の差があることが明確にわかります。
つまり、「スペ115」は、
- 「健康的で美しい」とされる美容体重よりも、はるかに軽い。
- 「痩せている」とされるシンデレラ体重と同等か、それ以上に軽い(BMIが低い)。
という位置づけになります。これは、「スペ115」が単なる「スリム」や「細身」というレベルではなく、医学的に「低体重(痩せすぎ)」と判断される状態であることを裏付けています。
さらに極端な「スペ120」(身長160cmなら40kg、BMI 15.6)よりは重いものの、「スペ115」も健康リスクが無視できないレベルの低体重である可能性が高いと言えます。SNSなどで見かける「#スペ115」というハッシュタグに憧れを感じる人もいるかもしれませんが、それが健康を犠牲にするほどの「痩せすぎ」である危険性を認識する必要があります。
「痩せすぎ」がもたらすリスクとは? ~スペ115を目指す前に知っておくべきこと~
なぜ「痩せすぎ(低体重)」が問題なのでしょうか? BMIが18.5を下回る状態は、見た目の問題だけでなく、心身に様々な悪影響を及ぼす可能性があります。「スペ115」のような低体重を目指したり、維持したりすることのリスクを具体的に見ていきましょう。
- 栄養不足による身体的な不調:
- 貧血: 食事量が少ないと、鉄分やビタミンB12などが不足し、めまい、立ちくらみ、倦怠感などを引き起こす貧血になりやすくなります。
- 骨粗しょう症のリスク増加: カルシウムやビタミンDの不足、および女性ホルモンの低下により、骨密度が低下し、若くても骨がもろくなり骨折しやすくなるリスクが高まります。これは将来の健康に深刻な影響を与えます。
- 肌や髪のトラブル: タンパク質やビタミン、ミネラルが不足すると、肌が乾燥したり、荒れたり、髪が抜けやすくなったり、ツヤがなくなったりします。
- 冷え性・低体温: 筋肉量が少なく、皮下脂肪も極端に少ないと、体温を維持する能力が低下し、常に体が冷えやすくなります。
- ホルモンバランスの乱れ:
- 月経不順・無月経: 体脂肪率が極端に低下すると、女性ホルモン(エストロゲンなど)の分泌が抑制され、月経周期が不規則になったり、完全に止まってしまったり(無月経)することがあります。
- 不妊のリスク: 無月経の状態が続くと、排卵が起こらなくなり、将来的に妊娠しにくくなる(不妊)リスクが高まります。妊娠できたとしても、低体重の母親からは低出生体重児が生まれるリスクが高いことも指摘されています。
- 免疫力の低下:
- 栄養不足は、体を病原体から守る免疫細胞の働きを低下させます。そのため、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなったり、治りにくくなったり、病気が重症化しやすくなったりします。
- 筋力・体力の低下:
- 食事制限によって筋肉量が減少すると、基礎代謝が低下するだけでなく、体を支える力や動かす力が弱まります。疲れやすくなったり、少し動いただけですぐ息切れしたり、日常生活に支障が出ることもあります。転倒のリスクも高まります。
- 精神面への影響:
- 低栄養状態は、脳機能にも影響を与え、集中力や記憶力の低下、気分の落ち込み(抑うつ)、不安感などを引き起こすことがあります。
- 常に体重や体型のことばかり考えてしまう強迫観念にとらわれ、精神的なストレスが増大することも少なくありません。
- 摂食障害のリスク:
- 「スペ115」のような極端な目標体重を設定し、過度なダイエットを行うことは、拒食症(神経性やせ症)や過食症(神経性過食症)といった摂食障害の発症につながる大きなリスク因子です。摂食障害は、心身ともに深刻なダメージを与え、時には生命に関わることもある精神疾患です。
このように、「痩せすぎ」は決して健康的な状態ではなく、むしろ様々な病気や不調のリスクを高める危険な状態です。「スペ115」を目指すことは、これらのリスクを自ら招き入れることになりかねません。見た目の細さだけを追求するあまり、健康というかけがえのないものを失ってしまうことのないよう、十分な注意が必要です。
健康的な体重と体づくりを目指すために
では、私たちは体重とどのように向き合い、何を目指すべきなのでしょうか?
まず大切なのは、「スペ115」のような医学的根拠のない俗称や、SNSなどで見られる「痩せている=美しい」といった一方的な価値観に惑わされないことです。情報に振り回されず、客観的な視点を持つことが重要です。
健康の基本は、特定の体重の数値を達成することではなく、日々の生活習慣にあります。
- バランスの取れた食事: 体に必要な栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、食物繊維)を過不足なく摂取する。極端な制限や偏りは避ける。
- 適度な運動: 筋力を維持・向上させ、心肺機能を高める運動を習慣にする。
- 十分な睡眠: 体と心を休ませ、ホルモンバランスを整える。
健康的な体重の目安としては、**BMIで「普通体重」の範囲(18.5~25未満)を目指すのが基本です。その中でも、統計的に最も病気のリスクが低いとされる標準体重(BMI 22)や、健康と見た目のスリムさのバランスが良いとされる美容体重(BMI 20)**あたりを参考にすると良いでしょう。
また、体重の数値だけでなく、**体組成(体脂肪率や筋肉量)**にも目を向けましょう。体重が同じでも、筋肉質で引き締まった体と、脂肪が多くたるんだ体では、健康状態も見た目も異なります。体組成計などを活用し、自分の体の状態を把握することも有効です。
もし、あなたが現在「低体重」の状態にある、体重が減り続けている、食事や体重のことが頭から離れない、などの悩みを抱えている場合は、一人で悩まず、必ず**専門家(医師、管理栄養士、公認心理師・臨床心理士などのカウンセラー)**に相談してください。早期に適切なサポートを受けることが、健康を取り戻すための第一歩となります。
まとめ
今回は、「スペ115」について、その計算方法からBMIによる評価、健康リスクまで詳しく解説しました。
結論として、「スペ115(身長cm – 115 = 体重kg)」は、その計算方法から算出される体重が非常に軽く、BMIで評価すると多くの場合「低体重(痩せすぎ)」に該当するか、その境界線上に位置します。
「痩せすぎ」の状態は、栄養不足、ホルモンバランスの乱れ、免疫力低下、筋力低下、精神不安定、摂食障害など、心身に様々な悪影響を及ぼすリスクを高めます。そのため、見た目の細さだけを求めて「スペ115」を目指すことは、健康の観点から強く推奨されません。
大切なのは、数字に囚われすぎず、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠といった健康的な生活習慣を基本とし、自分自身の心と体の声に耳を傾けることです。健康的な体重(BMI 18.5~25未満)を目指し、健やかで充実した毎日を送りましょう。
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